被告人




天王洲のアースフィアまで「被告人」を観に行ってきました。 事前に「観客が陪審員になる」とは聞いていたので意気揚々と向かいました。


被告「パトリック・シャーウッド医師(演:各務立基)」は妻エリザベス・シャーウッド殺しの罪で起訴され今回の法廷に出廷。
裁判官「カートライト(演:安原義人)」の下、「検事:アンソニー・カースリィ(演:戸井勝海)」と「弁護士:ジェームス・バーリントン(演:近藤正臣)」の法廷論争が開始される。


第一の証人は「アラン・ペイン ニューヨーク市警警部(演:後藤ひろゆき)」、通報により現場へ向かう。
現場では右手に青あざを作り、テーブル上のワイングラスを指差し続ける夫人を発見、救急車で搬送を確認。 現場検証の後病院へ向かうも夫人は死亡。 その場はただの心筋梗塞による自然死として処理されたが、現場のワインボトルからはシャーウッド氏の指紋だけが、致死量にも匹敵する大量の睡眠薬が検出されたワイングラスからはシャーウッド氏とシャーウッド夫人の双方の指紋だけが検出されたと証言。


第二の証人は「アルバート・ウェブスター管理人(演:川端槇二)」、シャーウッド氏の住むマンションの管理人で最上階から巡回していた時、「どうやって入ってきたの!」という夫人の叫び声を聞きスペアキーでシャーウッド氏の部屋に入る。
うめき声を上げる夫人を見つけるが同時に台所のドアが閉まる瞬間を目撃、気付け薬代わりにテーブル上のワイングラスを勧めようとするとそれを押しのけてさらに泣き出したと証言。 また当時往診用の鞄が部屋内に置かれていた事も証言。


第三の証人は「マスゥード・フセイン(演:山田敦彦)」、チェルシーの薬局店主。 シャーウッド氏のサイン入り処方箋で塩化カリウムを 10mg ずつ 6 回に渡って調合した事を証言、その際シャーウッド氏ではなく同じ女性が代理で購入に来ていた事も証言。
事件当時室内に置かれていた往診用鞄の中にあった塩化カリウムのアンプル 1 本がフセイン氏によって処方された薬である事が記録により証明された。


第四の証人は「アリスター・フォーサイス教授(演:佐々木勝彦)」、中毒学の権威として召喚された。
ワイングラスから通常服用量の 3 倍を超える強い睡眠薬が検出された事、台所で見つかったゴム手袋から 1mg 相当の塩化カリウムが検出された事を証言、注射前に空気抜きのために 1mg 程度放出するのでその際付着したものと思われる事を証言。 またカリウムなら痕跡を残さず殺人が行えることも証言。
しかし弁護人により、心筋梗塞で死亡した際には血液中に多量のカリウムが生成されるため、検死報告書にカリウムが検出された旨を記載しても気にとめられることはない事やカリウム自体は自然界にも存在し、グレープフルーツはカリウムを多量に含有する果実である事を証言。
なお塩化カリウム自体はアンプル 5 本程度で死に至ると考えられ 1 本では影響がないと弁護士がアンプルをその場で服用、影響がないことを証明した。


ここで舞台上の一日目(第一幕)終了、次いで二日目(第二幕)へ。


第五の証人は「ジェニファー・ミッチェル看護婦(演:小野妃香里)」。
シャーウッド氏の愛人であった事、シャーウッド氏が妻を疎んじていた事、ミッチェルに対して求愛していた事を証言。
また金曜日の夕刻、帰省のために実家へ戻る前にシャーウッド氏から処方箋を渡され、病院内では薬に替えないように指示されたとも証言。
さらに食事や観劇に度々誘われ家まで送ってもらった事を愛人関係にあった証拠として証言。
事件当日はミッチェルの部屋に来たが一度出かけ暫くして戻ってきた事を証言。 逢瀬の際には往診と偽って出てくるので往診用の鞄を持っていたが、その時は往診用鞄は持っていなかったとも証言。
弁護人から塩化カリウムを受領する際の受け取りサインがミッチェル本人のものである事を確認、試し書きを依頼するとミッチェルは同じ筆跡のサインを左手で記入。 発見されたゴム手袋が左手用である事から利き腕を質問されると右利きであると証言。
シャーウッド氏と愛人関係にあったなら、他の人の知らない特徴はないか?と聞かれ、右肘付近に小さな火傷痕があり普段は見えない事とベッドインの際には部屋を必ず暗くすると証言。
なお食事に行ったお店の名前や観劇した舞台の名称は覚えていないとも証言。


第六の証人は「パトリック・シャーウッド」。
自動車は持ってないし運転免許も持ってないのでミッチェルを家まで車で送ることは不可能である事を証言し彼女と愛人関係にあった事を否定。
事件当時は緊急で呼ばれてブルックリンまで出かけた事、死亡診断書を書くだけなので往診用の鞄は持参しなかった事を証言。
夫人の遺体を埋葬せず火葬にしたのは検死を妨げるためではなく夫人の遺言だと主張。
検事はミッチェルから預かった舞台「コンタクト」のパンフレットを見せて彼女と観に行ったのではないか?と追求、また彼女の日記の 2/15 の欄に

「7 時 30 分『コンタクト』P.S.ボーモント・シアターにて」

との記載があるがこの「P.S.」は「Post Script(追伸)」ではなく「パトリック・シャーウッド」の略でこの日にデートしたのではないかと追求。
遺言書の署名がシャーウッド氏によるタイプである事、夫人が不調を訴える前に 200 万ドルの生命保険に加入した事を追求。 豪邸の購入資金として、この保険金を当てにしていたのではないかと追求。
さらにミッチェルは「送ってもらった」とは証言したが「車で送ってもらった」とは一度も証言していない事を追求。
次いで弁護人により火傷痕は右肘に大きく存在し、手術前の手洗いの際には看護婦はそれを見る事が可能である事、さらに火傷痕は背中にも大きく目立つ痕が残っている事を上半身裸になることで証明。


カートライト裁判官により争点等の洗い直し。 以後案内人:ギルバート・ピアース(演:池田俊彦)主導の下評決を求められる。 観客は「無罪」か「有罪」かの面を前に出す、昔の NHK 紅白歌合戦の一般審査員の投票のような感じ。 これを集計して評決が出る。


今回は「無罪」にて結審。


法廷終了後、シャーウッド氏は弁護人に対して「一度評決が出たら、この件で再度裁判を受ける事があるのか?」を質問、弁護人は「一度無罪と出た以上同じ事件で再度裁判が行われる事は無い」事を回答。
終了後、シャーウッド氏と抱擁するミッチェル。 実行犯はミッチェルで彼女が塩化カリウムを妻エリザベスに対して注射したらしい。 共同犯罪は成功し無罪を勝ち得たがシャーウッド氏はミッチェルに対して利用しただけで結婚する意図は無いと断言、ミッチェルは失意する。


私は B 列 12 番だったのですが、私の見える範囲内は「有罪」が多かったんだけどなぁ。 なんか「無罪」で確定してしまいました。
これ「有罪」だった時のエンディングはどうなっていたんだろう? やぱりミッチェルの狂言なんだろうか? 確認出来ないのが辛いところです。

しかし法廷劇はいくつか観ましたけど、こういう手法は面白いですね、その分疲れますけど(笑)