マイクロソフト製品の EULA

私も詳しいわけではないが、知っている範囲内でマイクロソフト製品の「EULA(利用許諾契約)」に関する事を徒然と書いていこうと思う。
嘘書いていたらごめんなさい^^;。


■アップグレード版と旧版の取り扱いの巻


毎年のように各社からソフトウェアの最新版が発売され毎年のようにそれらにお金を支払っていく、そして余っていく旧版ソフトウェア。 「これを売りさばいたら幾ばくかのお金が取り戻せる?!」なんて思う人は多いハズ。 しかし待って欲しい、その旧版は本当に売って良いのか?

通常、市場には「通常版」と「アップグレード版」の二種類のパッケージが売られている。 通常版は「アップグレード対象の製品を持たない人」、つまり新規にパソコンを買った人やかなり古い製品を持っている人が対象となる。
「アップグレード版」を買うと導入の際に旧版確認として今持っている旧版メディアを確認するようになっているが、一度導入してしまえば以後は大抵不要になる。 しかし旧版メディアは捨てたり譲渡したり出来ないのだ。 それは「ライセンス(使用権)」の概念を理解すれば分かってもらえると思う。

例として Microsoft Windows 95 から Microsoft Windows 98 というアップグレードの流れを表してみた。
まず最初に「Microsoft Windows 95 (通常版)」を購入する、これのライセンスを「1」と仮定する。 次いで「Microsoft Windows 98」が発売される。 これの通常版は「1.5のライセンス」を必要とする、しかし「Microsoft Windows 95」を使っているユーザーなら既に「1.0のライセンス」を持っている事になるので差分の「0.5のライセンス」を追加購入する事になる、旧版の「1.0」にアップグレード版の「0.5」を足せば通常版の「Microsoft Windows 98」が必要とする「1.5のライセンス」に届く、つまり、アップグレード版のユーザーは「旧版を持っている事」が前提でアップグレード版を買って使うことが出来るのだ。
これは「Microsoft Windows 98」から「Microsoft Windows 2000 Professional」のアップグレード版を購入した時にも同じ計算が出来る、「Microsoft Windows 2000 Professional(通常版)」の必要ライセンスは「2.0」だと考えれば良いのだ。

という事で旧版ソフトウェアの FD や CD-ROM が山となっていく。 これを捨てたらどうなるのかは私にも分からない。 ライセンス(使用権)が足りなくなるのでやはり利用許諾違反になってしまうのだろうか?




■リテール版と OEM 版の違いの巻


マイクロソフト社のソフトウェア製品にはいくつかのカテゴリーがある。 ここでは「リテール製品」と「OEM 製品」の違いについて書いてみる。

まず「リテール製品」だが英和辞書を引いてみると「retail = 小売り」という事らしい。 つまり「一般に売られている形態」が「リテール」なのである。 そして本来はパソコンに導入(プリインストール)された形態でのみ提供されていた物が「OEM 版」と呼ばれる製品だ。 本来は市場には出回らなかったが近年マザーボードやメモリ、ハードディスクドライブなどとセットで売られている事も多いので見かけたことくらいはあるのではないだろうか?

一般に「OEM 製品は性能や制約が同じなのに価格が安くお買い得だ」という誤った知識が広まっているようである。 価格が安いのには当たり前だが理由がある、それがライセンス対象の限定だ。

リテール製品は購入し使用する人に対してライセンスされる、だからパソコンを使う人が同一である限りパーツ交換などパソコンを改造しても特に問題はない。(※1) しかし OEM 製品は利用者にライセンスされるのではなく同時購入したハードウェアにライセンスされるのだ、この違いは大きい。
例えばマザーボードなどのハードウェアとセットで購入した場合、セットで買ってきたハードウェアに対してライセンスされるので、この場合はマザーボードが電気的に繋がっている状態のパソコンでのみ使用することが出来る。 反対に言うと、新しいマザーボードを買ってきて換装するとライセンス対象ハードウェアが電気的に繋がっていないので使用する権利を一時的に失ってしまうのだ。 ここで「一時的」という言葉を使ったのは本来のマザーボードを再び刺せば使用する権利が戻ってくるからであり、他の理由では失ったままとなる事を忘れないで欲しい。 よく「ジャンク・メモリ」と抱き合わせで売っている場合も散見するが、買ったジャンクメモリは使用するパソコンに刺さっていて電気的に繋がっていないと使用権は認められない、ジャンクの場合はその名の通り junk (=がらくた)なので故障していれば折角買ったソフトウェア製品を使う権利まで逸してしまう。 今時そんな愚かな商売をするショップなど無いと思うが、購入に際してはご注意頂きたい。




■ボリューム・ライセンスの巻


ボリューム・ライセンス、略して「VL」、聞いたこともあるかもしれませんがマイクロソフト社の大規模企業向けの販売制度※2)の事です。 大規模と書いていますが利用するパソコンが 5 台以上からの中小企業向けのプログラムもありますので、普通の企業であれば利用が可能なライセンス・プログラムなのです。

昔はパソコンを複数台所有している企業も市販のパッケージを台数分買わなくてはいけませんでした、FD や CD-ROM、果てはあの分厚いマニュアル類まで台数分付いてくるのですから場所の占有は甚だしく大変でした。 その為に大手ユーザーの便宜を図るべく導入されたのが LAR / Select などの Volume License 制度です。
現在ではこの制度のお陰でマスター・メディアとなる CD-ROM が 1 枚以上とマニュアル類が 1 セット以上付いてきますが台数分ではなくなりました。 そして契約時に決まった台数分の導入をこの CD-ROM で行います。 その際に CD-KEY なども簡略化され大量導入が促進されました。 そうして、10 台のパソコンを持つ会社は 10 台分の契約を行い、10 台のパソコンに導入する事になりました。

ただし、この契約には制限があります。 当たり前ですが「同一企業内のパソコンにだけ導入する事が出来る」という制限です。 しかし余剰ライセンスを社外に販売したり、悪質な場合は契約したライセンス数を無視して違法に販売する行為が横行しています。
法的には「違法品だと知っていても業務に供さない限り罰されない」のですが、損害金額の確定のために購入した人にも警察が事情聴取にくる(※3)事もあるようです。 確かに正規品は高価かもしれませんが、安物買いの銭失いという諺(ことわざ)もあります、後で後悔しないようにしたいものです。

2004.03.05 追記。
Enforcement ページに右記のページが追加されたようです>「ヴォリュームライセンスという表示にお気をつけください




※1
一応「固定CPU方式」を採用しているので全てのパーツが交換可能ではないようだが、現実に即した規約ではなくなってきているように思う。 昔はパソコンは買い換える事が前提であったが、今はパーツ単位で買い換えて強化してるもんね。

※2
「ボリューム・ライセンス」という表記はマイクロソフト社が使っているものであって、Adobe 社の方に尋ねたところ、Adobe 社に「ボリューム・ライセンス(VL)」という名称の制度はないそうです。 もちろん違う名称ではあるのでしょうが Adobe 製品が「ボリューム・ライセンス(VL)」として売られていた場合は全て「違法コピー品(海賊版)」であると思った方が良いでしょう。

※3
任意同行なんだと思いますが、警察へ連れて行かれるケースもあるそうです。 平日の真っ昼間に(・・;) 仕事を持っている人は会社に休暇申請しないといけませんね(汗) 休む理由はやはり「犯罪に加担した為」ですか?(違)
なお、当たり前の事ですが違法入手したソフトウェアは没収、支払ったお金も返ってきません。

■関連リンク:

↑Topへ

Last Update: 03/05/2004; (C) ASOBI-NEKO all rights reserved. Back to home